姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 その姿を見て、心の奥底に燻っていた悲しみや怒りといった感情が完全に昇華していくのを感じた。同時に、こんなに私を想ってくれる人と出会えたこと、共に未来を歩んでいけること、その喜びに狂おしいくらい胸を熱くした。
 もう、寸分の迷いもない。私は愛するジンガルドと夫婦になって、どこまでも運命を共にするのだ──。
「ご列席の皆様を証人とし、ここにタイラント帝国皇帝ジンガルド、皇妃フィアンナの婚姻が相成りましたことを宣言いたします!」
 進行を取り仕切る司祭の宣言で厳かな挙式の前半が終了し、続く後半はがらりと雰囲気が変わり、食事とお酒、懇談を楽しむ華やかな立食パーティになる。
「お姉様、とってもお綺麗ですわ!」
 真っ先に駆けつけてくれたのは、ルクレツィア王女。
 珍しいのだが、伝統的に挙式後半の宴席に限っては、列席者が声がかりを待たずに皇帝夫妻に話しかけるのが認められている。ある程度の節度は保たれるが、無礼講というやつだ。
< 204 / 223 >

この作品をシェア

pagetop