姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 赤の他人にここでの振る舞いを目撃されたとしたら少し恥ずかしいが、相手は所詮一見だ。どう思われようと些末なこと。
 なにより、明日には正式にタイラント帝国の領土に入る。阿呆な私は、サドニア神聖王国に土産として置いていく。明日から生まれ変わったつもりで、私はタイラント帝国で新しい自分を生きるのだ。
 この時。
「あれが至高の華だと!? 馬鹿なっ!! 我が国はとんだ紛いものを掴まされた!」
 そんな怒りの声が旅装の一行からあがったことなど知る由もなく、私の胸は新たな暮らしへの期待感にあふれていた──。
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