姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 俺は言い置くと、居心地が悪い帝宮を後にする。
 俺自身腕には自信があり、ぞろぞろと護衛を引き連れることはしないが、〝視察〟の一語を合図に二名が騎士装束を解いて付かず離れずの距離に追従する。ちなみにエリックは現在、別の任務にあたっている。
 束の間の自由を求め、俺は帝都に向かった。

***

 タイラント帝国で暮らし始めて一週間が経った。
 よほど縁があるのだろうか。なんと私はこちらの国でも離宮で過ごしていた。
 ただし、同じ離宮でもその待遇は雲泥の差。なにせここでは温かい三度の食事にやわらかな寝床、親切な侍女集団に護衛の騎士……うーん、こちらはもしかすると監視かもしれないが。とにかく、お世話してくれる人がちゃんといるのだ。最高である。
 ちなみに、夫となる皇帝ジンガルドは花嫁行列が帝宮に着いた時も出迎えにすらこなかったし、今日まで顔を出すことはおろか、歓迎のメッセージひとつ寄越さない。
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