姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 珍しい発色のおかげで飛ぶように売れるのだけが救いだ。
 薔薇はあっという間に売れていき、最後の一輪を渡し、代わりに五百エンサを受け取る。
 ……やったぁ! 四輪分で二千エンサもある。前回我慢したお肉のサンドイッチに、伸びるアイスクリームも買えちゃうわ!
 ほくほく顔でケープのポケットにお金を入れようとして、強く引っ張りすぎてしまったようで、被っていたフードがハラリと落ちてしまう。
 いけない!
 淡い金髪がふわりと宙を舞い、肩をサラサラと滑る。この一週間、侍女の手で切り揃えられ、丁寧に手入れされた髪は、すっかり本来の艶を取り戻している。
 タイラント帝国民に暗褐色の髪色が多いのを差し引いても、それ自体が淡く発光しているかのような金髪は悪目立ちする。
 慌ててフードを被り直し、そそくさと人混みに紛れようとしたその時。
「待ってくれ!」
 えっ!? 横から伸びてきた手に肩を掴まれて、ビクンとしながら見上げた──。
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