姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 相手は女性の足。不意をつかれた最初の時とは違い、今回は追おうと思えば彼女の後を追うこともできた。しかし、その場に縫い付けられたかのように、足が動かなかった。
 それくらい『夫がいる』の一語は、破壊力があった。彼女が俺以外の男と夫婦になっていようとは、想像もしていなかった。
 同時に、形だけとはいえ俺にも妻がいる現実を嫌でも突きつけられた。仮に彼女に夫がいなかったとしても、俺が妻帯している以上、彼女には日陰の道しか示せない。そんな当たり前に思い至り、愕然とした。
 そう考えれば、逆にこの結果はよかったのかもしれない。
 俺たちには縁がなかったのだ。
 突きつけられた現実は胸に重く、それからは惰性で政務を熟して過ごした。
 時折、政務机に置いたままの『幸運を呼ぶ赤い薔薇』を見上げては、小さくため息をつく。
< 82 / 223 >

この作品をシェア

pagetop