姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 今世でこんなに穏やかな時間を過ごすのは初めてのこと。今の暮らしは、まさに私にとって天国のようだ。
 ……そう、平穏な今がいい。女遊びに熱を上げ、帝都をほっつき歩いているような夫は不要だ。
 どうかこのままの日々が、続きますように。今も熱を帯びているように感じる手首をおもむろに持ち上げて、払うようにパタパタと振りながら、心の中で呟いた。

***

 再び彼女と見える幸運を授けてくれ──。
 そんな俺の願いを『幸運を呼ぶ赤い薔薇』は、聞き入れてくれた。しかし、再会の先にあったのは、俺が望んでいたような嬉々とした展開ではなく。
 彼女の口から『夫がいるんです!』と聞かされた瞬間、鈍器で頭を殴られたかのような衝撃が俺を襲った。
 浮かれていた気持ちは一瞬で萎み、目の前が灰色に染まった。
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