姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 扉を引き開け、乗り込んだ室内に王女の姿はない。室内を見回し、すぐにテラスに続く大きな掃き出し窓に当たりを付ける。
「王女は庭か!」
 窓を乱暴に開け放ち、テラスに出てスロープで前庭に下りる。
 薔薇の咲く一角。支柱の陰でドレスの裾がヒラリと揺れるのを目にし、大股で距離を詰める。
「ここか!? お前はいったいどういうつもりだ!」
 支柱に手を掛け、俺よりも頭ふたつ分低い位置にある金色の頭頂に向かって怒鳴りつけると、華奢な体がビクンと跳ね、ゆっくりと上を向く。
「事前連絡もなしに昼餐をすっぽかす……なっ!? 君は──!」
 目と目が合った瞬間、痺れるような衝撃が襲う。声をなくし、ただ愕然として目の前の女性を見つめる。
 陽光を弾いて淡く輝く金髪も、少し目尻が下がった愛らしい童顔も、吸い込まれそうな紫の瞳も、間違いようなどない。十二年前に出会い、そしてやっと再会を果たしたと思ったら『夫がいる』と言って去っていった彼女で。
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