すべてはあの花のために④

 するとアヤメが葵の手を取り、台所から連れ出す。どうしたのだろうかと振り返ると、後ろから嬉しそうにナツメも付いてきていた。


「葵ちゃんに、いいものいっぱい見せてあげるわ」

「きっと喜ぶと思うんだ」


 連れてきてくれたのは、きっと二人の部屋。
 

「み。見て、いいんですか……?」

「いいわよ。どうせ見るのあたしたちぐらいだし」

「杜真は自分の部屋にも置かないから。恥ずかしがって」


「それが徒になるとも知らずにねえ、ぷぷぷ」と、顔を見合わせて笑う彼の両親が見せてくれたのは彼の……ううん。彼らの成長の証。アルバムだった。そこには、トーマが生まれた頃の写真や、キサ、チカゼ、キクと遊んでる写真。生徒会のみんなと、大はしゃぎしてる写真がいっぱいあった。


「~~……っ。かわいい……!」


 反則的なかわいさに涎を垂らしながら見ていると、二人も嬉しそうに笑う。


「葵ちゃん。聞いて欲しくないかもしれないんだけど、もしかして……」

「……そう、ですね。わたしは、こういう自分の記録みたいなものは持っていないんです。今の執事が、小5からの写真は持っていると思いますけど」

「葵ちゃんは、持ってないの?」


 尋ねられて、葵はゆっくりと目を閉じる。目元に残っていた最後のひとしずくが、ぽろっと零れた。


「持っていても、どうせ見られなくなると思っていたので……」

「……見られなく、なるって……」

「あ。でも、今はたくさん持つことにしたんです。本当はあんまり撮られるのも好きじゃないんですけど……今は、自分の思い出を人に持ってもらえることが幸せだって。そう、思えるようになったから」


「だから、今はスマホの中に友達との思い出がいっぱいあるんですよ~」と自慢すると、二人は自分のことのように笑ってくれた。


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