すべてはあの花のために④
これまた余計なことを……と頭を抱えながら、葵は社務所へと案内された。
「さっきはごめんね? ついつい」
「改めまして、道明寺 葵ちゃん。君がここへ来る連絡は、菖蒲さんから昨日の夜にいただいていてね」
「とってもいい子じゃって聞いとったからの。はよ会いたかったんじゃよ」
そうは言っても、変態がバレていてはもうどうしようもないけれど。
彼らは西園寺――キサの生みの母、椿。父親の伊吹、そしてイブキの父であり住職の桂。再会したあの後、どうやら籍を入れたらしい。
「あの後、ああやっぱりこの人にはあたしがいなきゃダメだなあと思って」
「俺も、やっぱりこいつに尻敷かれるくらいがちょうどよくて」
「めでたく椿さんがうちに嫁いできてくれたんじゃよ! あーめでたいのお~!」
「それはとってもおめでたいですね! キサちゃんたちにももちろん、悪魔くんにも報告しておかないと!」
「悪魔?」とみなさん最初は首を傾げていたけれど、誰のことかすぐにわかった一人は顔を引き攣らせていた。唯一の犠牲者だものね。
「それはそうと、自分探しの旅? 強くなりたいって聞いたけど……」
「はい。主に、心の方を強くしたくて」
「やっぱり欲望を抑える力が弱いんじゃろ! ワシが徹底的に欲を取っ払って――」
「いえ。変態はもうどうしようもないんでいいんです」
「そ、それだとすぐに警察行きになるんじゃない? この作品終わっちゃうわよ?」
「じゃ、じゃあそれもお願いします」
葵の頭の中には、先日のパンダカーが過った。
「にしてもなんでまた。わざわざここまで?」
「……もしかして、誰かに会いに来たのかな」
言い当てたイブキに小さく頷いた葵は、ここに来た経緯と理由を話すことに。