すべてはあの花のために④

 これまた余計なことを……と頭を抱えながら、葵は社務所へと案内された。


「さっきはごめんね? ついつい」

「改めまして、道明寺 葵ちゃん。君がここへ来る連絡は、菖蒲さんから昨日の夜にいただいていてね」

「とってもいい子じゃって聞いとったからの。はよ会いたかったんじゃよ」


 そうは言っても、変態がバレていてはもうどうしようもないけれど。

 彼らは西園寺――キサの生みの母、椿(つばき)。父親の伊吹(いぶき)、そしてイブキの父であり住職の(かつら)。再会したあの後、どうやら籍を入れたらしい。


「あの後、ああやっぱりこの人にはあたしがいなきゃダメだなあと思って」

「俺も、やっぱりこいつに尻敷かれるくらいがちょうどよくて」

「めでたく椿さんがうちに嫁いできてくれたんじゃよ! あーめでたいのお~!」

「それはとってもおめでたいですね! キサちゃんたちにももちろん、悪魔くんにも報告しておかないと!」


「悪魔?」とみなさん最初は首を傾げていたけれど、誰のことかすぐにわかった一人は顔を引き攣らせていた。唯一の犠牲者だものね。



「それはそうと、自分探しの旅? 強くなりたいって聞いたけど……」

「はい。主に、心の方を強くしたくて」

「やっぱり欲望を抑える力が弱いんじゃろ! ワシが徹底的に欲を取っ払って――」

「いえ。変態はもうどうしようもないんでいいんです」

「そ、それだとすぐに警察行きになるんじゃない? この作品終わっちゃうわよ?」

「じゃ、じゃあそれもお願いします」


 葵の頭の中には、先日のパンダカーが過った。


「にしてもなんでまた。わざわざここまで?」

「……もしかして、誰かに会いに来たのかな」


 言い当てたイブキに小さく頷いた葵は、ここに来た経緯と理由を話すことに。


< 133 / 267 >

この作品をシェア

pagetop