すべてはあの花のために④

「……ありがとう、ございました……」

「ごめんね。なんか翼くんだと当たりたくなっちゃうんだよ。なんでだろ」


 ツバサが運転席のシントにお礼を言うと、シントは一旦降りて彼と話をし出す。


「それは。……俺が、偽ってるからで」

「ううん。違うんだ。……多分、昔の自分見てるような気がして苛々してるんだと思う」

「え……?」

「弟が心配でしょうがないのに、何もしてやれなくて。……見てやることしか、自己満足で自分を責めることしかできなかった、あの頃みたいにさ」

「信人さん……」

「だから、何かあったら絶対に言って。俺は何もしてやれないかもしれないけど、話くらいは聞けるから」

「……はい」

「まあ、葵がその前に動くだろうけどね」

「ははっ。……そう、でしょうね」

「そうしたらきっと、君も解放される」


 シントの言葉に、ツバサは弾かれるように顔を上げた。


「……信人さん。やっぱりあなた、何か知って……」

「早く、君のかっこいい姿が見られることを期待しているよ」


 その後「ほら。葵と話したいなら話せば? 早くしねえと車出すぞ」と脅してくるシントに、『……やっぱり普通に嫌われてるだけかもしれない』と、内心落ち込むツバサであった。


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