すべてはあの花のために④
「それはそうと葵。よくもやってくれたねえ?」
「あ! お花の出来はどんな感じ?」
面倒くさくなりそうだったので、さっさと話題は変えた。
「もう。ちゃんと綺麗に出来たよ。葵の部屋で乾かしてるけど、日には当てないようにね。二週間くらい風通しがいいところで乾かしてやって」
「そっか。あの子もお日様に当てられないんだね……」
「葵……」
「あっ。……ごめんごめん! 任せといて! 家に帰ってからが楽しみだよ!」
しんみりした空気を打ち消すように笑いかける。それが空元気だとわかっていても、シントはそれ以上深くは聞かないまま苦笑を浮かべていた。
「それはそうと、どうして俺あんなに寝ちゃってたわけ? 寝不足だったとはいえ、半日以上寝てたんだけど」
「さあ? なんでかなあ?」
「……じゃあ、あのアロマ何。あの痺れ薬はどうしたの」
「さあ? ま、この際何でもありだよね~」
「……電話、なんで電源切ってたの。なのになんでメールは送れるの!」
「企業秘密でーす」
「絶対に倍返ししてやる」
「あ。じゃあ、このスマホの中にあるシントのメイドお着替えシーン約100枚をみんなの連絡先に貼り付けちゃおーっと」
「100枚?!」
「それが嫌ならこれ以上詮索はしないことだぜい」
シントは悔しそうに顔を歪ませ、ハンドルを握ったのだった。