すべてはあの花のために④

「……アオイさん、言うたか。なんや、“はじめまして”な気がせえへんのやけど」

「……いいえ、高千穂 藤香(たかちほ ふじか)様。はじめましてですよ」


 彼女は少し目を細めた。まるで、その言葉の深意を確かめるように。


「……まあ、私以外のみんなはあんたのことよう知っとるみたいやし。あんたも聞いていき」

「はい。ありがとうございますフジカ様」


 小さく息をついた祖母フジカは、チカゼに向き直る。


「先に言うとくけどな。今、どうにかできる話と違う。チカゼ、もう暴れんか? ビービー泣かんか?」

「……よくわかんねえけど、オレはもう大丈夫だ。ちゃんと自分、抑えられっから」


 チカゼの真っ直ぐな言葉に、彼女も、アカリもサツキも、カエデもほっと小さく息を吐いた。


「そんなら、キサちゃんもキクもええか? 聞いてて楽しいもんと違う。それでも、あんたらはチカゼに付いててやってくれるか?」

「もちろんだよ藤ばあちゃん!」

「フジばあに言われなくても、オレらはずっとこいつのこと見てるさ」


 得意顔で話す二人に、葵も自然と笑みが零れる。


「…………あれはな。チカゼが4つか5つになる年や」


 ゆっくりとフジカが話し出すのは、見放す選択を取らざるを得なかった、チカゼ両親の話。


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