婚約破棄されたので、契約母になります~子育て中の私は、策士な王子様に翻弄されっぱなしです~

第7話 お嬢様と王子様は恋仲なのですね!?~SIDEアデリナ~

 一方、アデリナはキッチンでの後片付けを終えて、ダイニングの大きな窓から庭を眺めていた。
 そこには、楽しそうに庭を走っているフローラとルイトの姿があった。

「まあ、まあ、お嬢様とルイト様ったら、あんなにはしゃいで……」

 アデリナは口元に手を当てて、嬉しそうに笑った。
 すると、そんな二人のもとへ長い銀髪の男性が近づいていく。

「ふ、不審者!?」

 アデリナは急いでキッチンに戻ってナイフを取り出すと、窓を開けてフローラたちを守ろうとしに走る。
 しかし、そこでフローラの声が響き渡った。

「ヴィル・クライン第一王子……!」

 その声を聞き、アデリナは急いでナイフを背中の後ろに隠す。

(あ、危ない……私、王子様を刺しにいってしまうところだったわ。危なかった……お嬢様、ありがとうございます。お声をあげてくださって……)

 確かによく見ると、銀色の長い髪に、キリっとした目の美しい絵のような彼は、只者ではなかった。
 アデリナは少々せっかちなところがあり、今回のような早とちりが多い。
 それゆえ、こう次に考えてしまう。

「えっ! もしかして、ルイト様って本当はお嬢様とヴィル王子の子……!?」

 両手で口元を覆って誰も聞いていないか、きょろきょろと確認すると、カーテンに隠れて外の様子を覗く。

「あっ! かくれんぼが始まったわ!」

 ルイトが隠れに向かった後、フローラも急いで隠れるところを探している。

「お嬢様、昔からかくれんぼがあまりお上手ではないのよね……」

 フローラの幼い頃、一緒にやった遊びの時間のことを思い出す。
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