ことりは優しく癒される

「片想い拗らせて笑顔振り撒いていい人ぶるよりは、思い切りぶつかって玉砕したほうが気持ちにケリがついて切り替えられるだろ」

「そんなの、無理に決まってるよ」


 そう強めに言うと、テーブルに片方の肘をついたまま私の顔を覗き込むように、屈んで近づいてくる羽村。
 いつもより近くて、少しだけ肩に力が入る。


「そうやって何年ウジウジしてんだよ。いい加減前向いてもっと視野広げろよ」


 いつも適当に茶化して慰める羽村が、今までとは違う強気な言葉で私に向かって言い放つ。


 その態度と言葉が胸に突き刺さり、なにも言葉が出てこない。


 すると、近くに寄った羽村がさらに近づいてくる。


「お前があいつばっか見てるせいで、見向きもしてもらえないヤツがいることも覚えとけよ」


 そう言うと私の頭をワシワシと強く撫でる。


「どういう、こと……?」

「まあ、いまは気にすんな。とりあえず一杯行くか。今日は俺が特別に奢ってやるよ」


 羽村は空になった紙カップをグシャリと潰して立ち上がると、早々にカフェを出ていこうとする。


 私は一瞬何を言われたのか分からず、羽村の後ろ姿を眺めながら自分の頭を擦った。


 いつになく真剣な顔でそんなことを言うから、安達と真嶋さんの婚約のことで涙が出るはずが、羽村の態度の方が理解できなくて、おかげで涙も引っ込んでしまった。


「あ、羽村、ちょっと待って!」


 歩道に出て振り向いた羽村が少しだけ微笑んで待ってくれている。
 私は慌てて隣に駆け寄った。


 きっと、いつもどおり揶揄っただけなのだろう、そう思うしかなかった。






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