ことりは優しく癒される

 あれから数日間、羽村に言われたことを考えていた。


――『思い切って告白してみたら?』
――『思い切りぶつかって玉砕したほうが気持ちにケリがついて切り替えられるだろ』
――『そうやって何年ウジウジしてんだよ。いい加減前向いてもっと視野広げろよ』


 友人として同期として何も言わずにいるほうが傷つかずに安心して過ごせる。


 けれど、言わなければ鬱積した執着を解消することができず、きっとこれから先も膿のように心の奥に固まったままになる。


 分かってるけど、このままでいい、現状のままで……。という臆病な自分がいてどうしても踏み出せない。


 だからこそこうして動けずにいるから、告白できず何年も拗らせ、どんどん彼女と幸せになっていく姿を見て苦しくなっていってるのだ。
 そんなことは自分でもわかっている。


――『見向きもしてもらえないヤツがいることも覚えとけよ』


 羽村の言葉が本当なら、誰かが私を見ていてくれているんだろうか……。
 その人はいま、どういう気持ちなんだろう。相手は私の知る人なんだろうか。


 そんなことを考えてみても、その見知らぬ誰かからも言葉にして告白されないと気持ちは伝わってこない。


 だからこそ私も同じように、勇気を出して伝えなければ伝わらないのだろう。そういうことなのだ。





 何も進まないまま、時間だけが過ぎていく。
 羽村ともあれ以来顔を合わせていない。


 お互い連絡を取り合ってないだけなのに、いつも冗談でも慰めて励ましてくれていた人がいないと思うと、寂しく感じるのは不思議だ。


 それほどに、私にとって羽村はかけがえのない友人になっていたんだと気が付いた。


 仕事は忙しいんだろうか。今度連絡を入れてみよう。そして、また飲みに行こうと誘ってみよう。


 そんなことを思いながら見積書片手に廊下を歩いていると、前方から安達が歩いてくるのが見えた。
 ほんの少し、ドキッと胸が震える。


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