ことりは優しく癒される
「……私ね、ずっと安達のことが好きだったんだ」
「え?」
「優しくて気遣いができて素敵な人だなあって思ってたの。でもどれだけ近づいてもやっぱり安達は私のこと友達としか見てないし、真嶋さん一筋だから見向きもされなかった」
「……あ、え……」
「だけど隣に並ぶのは初めから私じゃなかったんだって、二人の幸せそうな表情を見て気づいた。二人見てると私の気持ちなんてどうでもいいくらい、幸せになって欲しいってあらためて思ったよ」
「……」
「だから今は友人として真嶋さんの先輩として心から祝福したい気持ちでいっぱい。本当におめでとう。――っていうのを自己満足で言ってみたかっただけなんだ。ごめんね、いきなり」
私はいきなり迷惑なことを言っちゃったなと思いながら、勢いでも自分の気持ちをさらけ出せて心なしかすっきりした気持ちになった。
「……えと、なんて言っていいかわらないけど、ありがとう。気持ちには気づいてなかったけど、結城みたいな美人に好かれてたと思うと嬉しいよ。でも、やっぱり俺が好きなのは明美で、彼女しか見えないんだ」
安達は困った感じで照れくさそうに言葉にしてくれた。
「そんなの分かってるよ」
「だからさ、今後も同期として友人として結城とは仲良くしていきたいと思う」
「もちろん」
お互い照れくさい気持ちになりながら笑い合った。
羽村のおかげで勇気を出して告白することができて本当によかった。
胸の中につかえていたものがやっと消えた気がする。
「でもさ、俺。結城はずっと羽村と付き合ってるって思ってたよ」
「っえ!? なんで!?」
「だっていつも一緒にいるし、何も言わなくても分かり合ってる感じだったから」
「そ、そんなことないよっ。ただの友達だし」
「けど羽村はそう思ってないかもしれないよ」
「――っ!?」
なぜか安達はニヤリと意味深に笑うと、眼鏡の縁を押し上げてひとつ咳払いをした。