ことりは優しく癒される
「いいかげん奪ったらいいんじゃねーの?」
「……そういう目で見られてないの知ってるし、奪うとか無理」
突っ伏した顔をようやく上げて、目の前にあるバニラアイスの上に乗ったミントの葉をスプーンでつついた。
「お前、そういうとこほんと臆病だよな」
「好きな人の迷惑になりたくない。それに……彼女の真嶋(ましま)さんはいい子だから、可哀そうなこともしたくない」
「お人よしか」
「……いいもん」
グスっと鼻をすする。
安達の彼女の真嶋さんは私の直属の後輩。
慕ってくれるし、なにより彼女自身の性格がとても可愛い。
そりゃ、安達も好きになるはずだと納得できる。
お互い素敵な人同士お似合いなのは言うまでもない。
だから奪うなんてできるわけがない。
もちろん自分が臆病なことは誰よりも分かっている。
分かってるから、好きになってニ年も友人の位置に甘んじていたのだ。
そして失恋した思いを引きずってさらに一年。
自分でも往生際が悪いと思いながら、なかなか思いを断ち切れずにいる。
ここまで引きずると、本当に失恋で悲しいのかただの執着なのかわからなくなってくる。
そんな私を見て羽村はいつも呆れている。