ことりは優しく癒される

「いいかげん奪ったらいいんじゃねーの?」

「……そういう目で見られてないの知ってるし、奪うとか無理」


 突っ伏した顔をようやく上げて、目の前にあるバニラアイスの上に乗ったミントの葉をスプーンでつついた。


「お前、そういうとこほんと臆病だよな」

「好きな人の迷惑になりたくない。それに……彼女の真嶋(ましま)さんはいい子だから、可哀そうなこともしたくない」

「お人よしか」

「……いいもん」


 グスっと鼻をすする。
 安達の彼女の真嶋さんは私の直属の後輩。


 慕ってくれるし、なにより彼女自身の性格がとても可愛い。
 そりゃ、安達も好きになるはずだと納得できる。
お互い素敵な人同士お似合いなのは言うまでもない。


 だから奪うなんてできるわけがない。
 もちろん自分が臆病なことは誰よりも分かっている。


 分かってるから、好きになってニ年も友人の位置に甘んじていたのだ。
 そして失恋した思いを引きずってさらに一年。


 自分でも往生際が悪いと思いながら、なかなか思いを断ち切れずにいる。


 ここまで引きずると、本当に失恋で悲しいのかただの執着なのかわからなくなってくる。


 そんな私を見て羽村はいつも呆れている。



< 3 / 18 >

この作品をシェア

pagetop