ことりは優しく癒される

「ん」

「なに?」

「早く食え」

「自分で食べる」


 ひとさじ掬ったアイスを目の前に差し出され、私は眉を寄せた。


「いいから食え」


 ムスッとした顔でパクリと口にしてみた。
 思った通りの甘さで、解けかけて液体に変わろうとしているものを口に含んでも、それほど冷たくもなくすぐに飲み込める。


 そしてまた差し出される。


「自分で食べるって」


 そう言っても口に寄せてくる。
 何度目かの往復を繰り返し、惰性で口を開けて待っていた。すると目の前に来たスプーンは引き返し、なぜか羽村の口の中へ消えていった。


「ちょっ、何してんの!?」

「おまえ、俺をなんだと思ってんだ」

「……は? 羽村が食べさせてきたんじゃない」

「親鳥の餌を待つヒナか。甘えんな」

「そっちがしてきたんでしょ」

「あ、そっか。これがほんとの“ことり”ってやつだな。あははは」

「バカじゃないの」


 ほんとどうかしてる。
 乗ってしまった私も私だけど、可笑しくもない羽村の笑いに目を細めてしまう。


 でも、こうやっていつも茶化しては私の気持ちを立て直してくれる。
 そんな羽村にはいつも助けられていて、ありがたい同期だ。


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