ことりは優しく癒される
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数日後。
繊維会社の経理で働く私の隣には、あの安達の彼女の真嶋さんが座っている。
少しふくよかで、笑った顔が癒される癒し系の彼女。
彼女の幸せそうな笑顔を見るたびに、二人の仲を裂くなんてできるわけがないといつも思ってしまう。
それなのにいつまでもいつまでも執着して、私は一体どうしたいのか自分でも分からなくなってきている。
「はぁ……」
「結城さん、お疲れですか?」
「あ、うん。ちょっと目が凝ったかな」
パソコンを見つめていた姿勢を伸ばすように、椅子の背に体重をかけて天井を見上げ、指でつまんで目頭を押さえた。
すると隣からガサゴソと音がしたため横目でチラリと盗み見ると、自席の机の引き出しから何かを取り出した真嶋さん。
「内緒ですけど、癒しのひとときにこれどうぞ」
コソコソと耳打ちするように近づいてくると、手のひらに乗せた白くて丸いものを私に差し出した。
「富く屋のお饅頭です。昨日やっと買えたので、結城さんに渡そうと思って持って来たんです。どうぞ」
癒し系の笑顔で私の手のひらの上にポンとふたつ乗せてくれた。
確か、ここのお饅頭は数量限定でなかなか手に入らないと聞いていたお店だ。それをふたつも。どうやって……
「もしかして、安達と一緒に買いに行った?」
「うふふ、実は私が食べたいって言ったら買ってきてくれたんです。結城さんの分までちゃっかりお願いしました。なので、みんなには内緒ですよ」
と可愛らしく報告してくれる。
私にまで気を遣ってくれて……。そんなところが憎めない。そしてにっこりと邪気のない笑顔を向けられると、やっぱり真嶋さんには敵わないなと思ってしまう。