ことりは優しく癒される

 私がカフェに着くと、すでに羽村は席に座って待っていた。


「ごめん、急に呼び出して」

「いや別に。それよりなんかあったのか?」


 コーヒーの紙カップ片手に右の眉を上げて、ひと口含んだ羽村。
 私の様子を察して、じっと見つめてくる。


「……婚約、したんだって」


 そう言うと、口にしていたコーヒーを机に置き、肘をついて人差し指でこめかみを触った。


「ああー……とうとう聞いたか」

「と、とうとうって羽村知ってたの?」


 その言葉に驚いてテーブルに体を乗り出して聞いてみれば、以前安達からそれとなく聞いていたという。


「どうして教えてくれなかったの!?」

「俺が教えるより、自分の耳で聞いた方が結城は納得するだろ」

「そうだけど……」


 だからといって、と問い詰めたところで羽村はなにも悪くない。
 むしろ私に気を遣って黙っていてくれたんだろう。


 それなのに、なんだか裏切られた気分になるのはどうしてだろう?
 安達の婚約もショックだけど、なにも言ってくれなかった羽村にもなぜかショックを受けている。


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