すべてはあの花のために⑤

 というのも、葵たちが知ったのは、本当に修学旅行へ出発する前の週の金曜日の放課後。


「それじゃあ千風、日向、桜李。後は頼んだからな」


 2年生組が抜けてしまうので、あまりできていなかった見回りは一旦中止。何かあれば連絡するようにアキラが伝えたのだが。


「残念だけどな、アキ。それはできねえんだ」

「そうそう」

「ごめんね~あっくん」


 1年生組がそんなことを言い出したので、どうしたのかと2年生組は、首を捻らせていました。


「まさかアンタたち、西の奴らを捕まえようとしてんじゃないでしょうね」

「それはだーめ。俺らで決めたでしょ? こういうのはきちんと対応取れる日でも十分だよ」

「そうそう! おれら四泊五日で帰ってくるから、そのあとまた一緒にすればいいよ!」

「それともあれか。俺に連絡したくないのか。……それならっ。他の誰でもいいから連絡してくれ……」

「アキ!? なんでいきなりネガティブ発言?!」

「アキくん以外にそんな大役は無理だから」

「そうそう。安心して~」


 どうやら、三人だけで西を捕まえようとしているわけでもなく、アキラに連絡したくないということでもないらしい。


「……キサちゃん、なんだか嫌な予感がするんだけど」

「奇遇だねあっちゃん。あたしもだ」


 そして二人の予想は見事的中。


「「「オレ(おれ)らも沖縄行くから~」」」


 どうやら彼らは、体育祭の賞品である【いつでもどこでも好きなとこへ行っちゃえヨの旅行券】を使うらしい。


「理事長には言ってあるからよー」

「思う存分遊んで来いって」

「そういうこと~」


 確かに、2年生が修学旅行の間、生徒会の集まりは特にない。次の集まりは、クリスマスパーティーの企画詰めになるだろう。


「にしても、生徒会を五日も空けて置いて大丈夫か?」

「そうよ。何か問題があったらどうするのよ」


 なんだかんだで、学校内ではいろいろ問題事がある。そんな対応も教師ではなく生徒会に振られるため、今では雑用係と化しているけど。


「(ま、結局のところそれも口実だったりするんだよね)」


 一言でも生徒会のみんなと話したい人たちが大勢いるので、葵は寧ろ生徒会がいなくなった学校の方に興味が湧いてしまっていた。


「にしてもよう、なんで沖縄なんだよ」

「そうそう」

「お金持ってる人いっぱいいるんだろうし、外国とか行けただろうにね~?」


 1年生組がそんなことを話している。
 それを聞いて、少しだけ葵の顔に影が差したことに、気づいた人がいるかどうかはわからない。

 ……恐らくその原因は『あおい』だろう。それは重々わかっている。理事長ももちろんだ。


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