うしろの正面だーあれ
『こんな時間まで、ここで何してたんだい?ここは立ち入り禁止だよ。』
『ごめんなさい…。』
咲子はそれ以上、何も言わなかった。
突き落とされたことも…。
『一体、何時間歩き回っていたんだ?』
『分からない…。
でも、すごく歩いた。』
『そうか。…キツネに一杯くわされたかな。』
『え…?ここに、キツネさんがいるの!?』
『…いや。裏山に、祠(ホコラ)があるのは知ってるかな?』
『うん。
石のキツネさんが居るね。』
『そうだ。そのキツネの石像が夜になると動き出して、人間にイタズラするんだよ。その空間に閉じ込めて、なかなか抜け出せないようにしてね。』
『へぇ…。
そういえば、フクロウさんが鳴いたら、おじさん達が来たよ。』
『そう。フクロウが鳴いたらキツネは帰っていく。』
『どうして?』
『…昔、親がいなかったキツネの子を、フクロウが育てたんだ。』
『優しいフクロウさんだね。』
『そうだな。お母さんに怒られたキツネは、イタズラを止めて元の場所に帰る。』
年配の警官は、濡れたハンカチで咲子の傷をポンポンと優しく叩いた。