うしろの正面だーあれ



『こんな時間まで、ここで何してたんだい?ここは立ち入り禁止だよ。』



『ごめんなさい…。』



咲子はそれ以上、何も言わなかった。



突き落とされたことも…。



『一体、何時間歩き回っていたんだ?』



『分からない…。
でも、すごく歩いた。』



『そうか。…キツネに一杯くわされたかな。』



『え…?ここに、キツネさんがいるの!?』



『…いや。裏山に、祠(ホコラ)があるのは知ってるかな?』



『うん。
石のキツネさんが居るね。』



『そうだ。そのキツネの石像が夜になると動き出して、人間にイタズラするんだよ。その空間に閉じ込めて、なかなか抜け出せないようにしてね。』



『へぇ…。
そういえば、フクロウさんが鳴いたら、おじさん達が来たよ。』



『そう。フクロウが鳴いたらキツネは帰っていく。』



『どうして?』



『…昔、親がいなかったキツネの子を、フクロウが育てたんだ。』



『優しいフクロウさんだね。』



『そうだな。お母さんに怒られたキツネは、イタズラを止めて元の場所に帰る。』



年配の警官は、濡れたハンカチで咲子の傷をポンポンと優しく叩いた。



< 150 / 675 >

この作品をシェア

pagetop