うしろの正面だーあれ
『松下さん、そんな子ども騙し 信じてんすか?』
若い警官が言った。
『なんだ、お前は信じてないのか。…まぁ、自分で体験してみないと なかなか信じれないよなぁ。』
『えっ…松下さん、経験あるんすか!』
『ああ、まだ小さな頃にな。
…父親に、えらく怒られてなぁ。近所だった、ここの裏山に逃げてきたんだ。』
『松下さんにも可愛い頃があったんすねぇ…。』
『お前は黙ってろ。
…それで、いつの間にか寝てしまったんだ。気付いたときには、もう辺りは真っ暗でなぁ。
焦ったよ。早く帰ろうと思えば思う程、同じ道を何度も通っている気がしてな。』
『それで、おじさんはどうしたの?』
咲子は興味津々に尋ねた。
『…父親が迎えに来てくれたんだ。』
『お父さんが?』
『ああ。あれは感動したね。
厳格な父親が、自分のために足を運んでくれるとは思ってもみなかった。』
『ぅ゙ゔっ…』
『…お前は何で泣いてるんだ。』
『良い話ですねぇっ…!!!』
若い警官の突然の涙に、咲子は笑った。