うしろの正面だーあれ
母親の後ろから現れたのは、弟の健太だ。
『姉ちゃん、どこ行ってたんだよ…。僕、眠れなかったんだぞ…。』
そう言った健太の目は、今にも閉じてしまいそうだ。
『ごめん…ごめんね…。』
咲子は静かに頬を濡らし、呟くように何度も謝った。
ガチャッ
『咲子!!!』
『お父さ…』
父は、咲子の言葉を遮って、母親ごと咲子を包み込んだ。
『よく無事だったな…。』
『ん…。』
父親は、咲子を探しに行っていたのだ。
こんな時間に妻と息子を外には連れ出せないと言って、自分だけ飛び出して行ったのだ。
連絡を受けて、飛んで帰ってきた。
父親は肩を大きく上下させながらも、抱きしめるのをやめなかった。