うしろの正面だーあれ
咲子は顔を上げ、隆史を見た。
その瞳に揺るぎは無く、力強い。
本当に咲子なのかと疑ってしまう程に、彼女の瞳は鋭い眼光を放っている。
「咲子…?」
不安げに小首を傾げる隆史の頬に触れ、咲子は隆史に口付けた。
それはキスというよりも、唇を奪ったという表現の方が近いだろう。
驚いた隆史は、咄嗟に咲子の肩を掴み、引き離す。
引き離されたことに驚いた咲子は、揺れる瞳で隆史を見つめた。
「…どうしたんだよ。」
真剣な表情で、隆史は問う。
その問いに、咲子は答えられずにいた。
「…咲子らしくない。」
少し冷たい声で、隆史は言った。
一瞬 咲子を見た後、隆史は保健室を出ていってしまった。
ひとり残された保健室は、寒さが身にしみる。
拒否された悲しさ
自分のした行為に対する羞恥心
隆史の気持ちも考えず、自分のことばかりに必死になって…
咲子は自分を恥じた。
泣く資格なんて無い、そう思えば思う程に、主人公の意地らしさに泣けてくる。
自分は、悲劇のヒロインなのだ。