うしろの正面だーあれ
「…あっ そうだ!
今日は携帯持ってきてるよね?
アド交換しよっ♪」
腕の消毒を一通り終えた後、不意に女子生徒が言った。
「………………。」
「瀬崎くん…?」
「俺さぁ、メモリーに女の子のアドレス、1人しか入ってない。」
「…え!?珍しいね!
じゃあ、あたしが2番目だ?」
嬉しそうに携帯を取り出す女子生徒を、隆史は少し困った顔をして見ていたが、やがて静かに口を開いた。
「つまりさ、本命しか入れないし教えないの。」
「ふぅん…。じゃあ あたしのこと好きになってよ。」
伸びた腕が隆史の首に絡む。
ゆっくりと距離が縮まっていく。
「…俺、お前の名前も知らねぇんだ。悪ィな。
…これ、サンキュ。助かった。」
左腕を軽く持ち上げながら礼を言い、隆史は保健室を出ていった。