うしろの正面だーあれ



授業中も、俯くか顔を伏せるか頬杖で隠すかのどれかだった。



隆史だけには見られたくない。



彼の好きな人がこの教室に居るかもしれない中で、こんなにも醜い顔を、彼にだけは晒したくない。



…いや、彼だけではない。



彼の“好きな人”にも、どうしても見られたくない。



咲子は、今にも泣き出しそうな想いを必死で堪えていた。






キーンコーンカーンコーン・・

キーンコーンカーンコーン・・






休み時間になっても、咲子は動こうとはしなかった。



寝たフリをして、誰からも話し掛けられないように世界をシャットダウンしていた。



寝ている者に話し掛けるような不躾な者もおらず、咲子の庭に土足で入ってくる者は誰一人 居なかった。



それに安心しているはずが、どこか寂しくも感じている自分が居た。



どこかで、話を聞いてくれる者の存在を待っていた。



それが矛盾していることも、よく解っていたのだけれど。



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