うしろの正面だーあれ



沙良の瞳には、強い意志が宿っていた。



それを、隆史も気付いていた。



「…やっぱ こっちな。」



そう言って、スポーツドリンクを渡す。



沙良は、ありがとうの代わりに小さく微笑んだ。



「一喜くんが知ったらどうなるんだろ…。」



ズズッと鼻をすすって、沙良は空を見上げた。



「本当は、憂のこと大切にしてたんだもん…。なのに…自分のせいで死んだなんて知ったら…」



じわっと涙が溢れてくる。



ツンと鼻が痛む。



「何で…こんなっ…」



涙は枯れることを知らない。



そんな沙良に、隆史はもう背中を擦ってやることも、肩を抱いてやることも出来なかった。



沙良が、そうさせなかったから。



< 610 / 675 >

この作品をシェア

pagetop