うしろの正面だーあれ



続々と人が集まり、静まり返る。



重い空気の中 導師が現れ、軽く会釈をして座る。



長い読経が始まり、数珠を持って拝む者や下を向く者、涙を流す者、それぞれだった。



隆史はずっと、憂の遺影を見つめていた。



隣に座る沙良もまた、憂の遺影から目を離すことはなかった。



すすり泣く声が聞こえようが、沙良の耳には届かなかった。



赤ちゃんのような無垢な瞳で、沙良は愛する人を見ていた。



時が止まってしまった愛する人を。



写真の中でしか笑えなくなった愛する人を。



彼女は、その瞳で捕えて離さなかった。



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