すべてはあの花のために⑥

頑張ってね。お兄ちゃん


 翌日。


「(……気まずい)」


 重い足取りで、葵は登校していた。


「(……大丈夫。大丈夫だ!)」


 昨日、キクの車の中で決めたんだ。


「(うん! 嫌われてるんだから、まずはわたしのことを好いてもらわないとね!)」


 初歩の初歩だ!
 自分の、友達の作り方を思い出せ!


「(友達になるにはまず、近づくことでしょう!)」


 最初にそうみんなに言った。それでもう、みんなは近づいていると言ってくれたんだ。


「(ちょっと怖いけど。でも、絶対友達になってやるんだから……!)」


 一度拒否をされてしまうと、やっぱりどうしても怖くなる。


「(ウザいって、嫌いって言われても気にしないぞ! 消えろ……は、やっぱりちょっとわたしのこともあって嫌でもあるけど。……でも、わたしはヒナタくんと友達になりたいんだ!)」


 よし、善は急げ!
 葵は自分のクラスへ行く前に、彼のクラスへと足を進めた。


「(あれ? 姿が見えない……)」


 時刻は8時半を回っている。オレンジ頭はいなかったけれど、ピンクとブラウンはばっちり見つけた。


「あ! あーちゃんおはよ~!」

「おはようございます。オウリくん」

「体調は大丈夫かよ」

「あ。……はい。大丈夫です。すみません。昨日は会議に出られなくて」


 そうだった。すっかり忘れてたけど、嘘ついてしまっていたんだ。


「(……大丈夫。これはしょうがないこと)」


 そう言って言い聞かせる。


「……あれ? そういえばヒナタくんは今日、まだ登校してないんですか?」

「あ、ああ。そうだな。まだしてねえな、今日は」

「そ、そうだね~。遅いねえ~?」


 自然を装うけれど、二人は少し視線を逸らした。


「(不自然だったかな。もしかして、ヒナタくんを捜しに来たってバレた?)」


 理由はわからなかったけれど、もうすぐ朝のHRの時間。また放課後の会議で会えばいいかと、葵は二人に挨拶をして自分の教室へ帰っていった。


「……あいつ、結局何しに来たんだ?」

「さあ?」


 二人は揃って首を傾げたのだった。


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