すべてはあの花のために⑥

 それからツバサのことには触れず、ただ単に会議までの時間2年生組は駄弁っていた。こんなこと久し振りで、今まで話さなかった分たくさんたくさん話をした。
 勇気を出してよかった。こうしてまたみんなで話せるように、もっと頑張らないと。


「おー。今日は早え……えっ。おいツバサ! どうしたんだよその顔!!」

「つっくん!?」


 放課後。二人は入ってくるなりツバサの顔を見て驚愕していた。


「(あ、れ……)」


 やっぱり彼の姿は見当たらなかった。


「(まさか、避けられてる?)」


 でも、二人がわーわー言っていて、聞くに聞けないまま会議が始まろうとしている。


「それじゃあ葵、昨日決まったことなんだが」

「あ、あのさ」


 ――どうしてみんな、何も言わないの。みんなは、知っていることなの?


「ん? どうした?」

「……ヒナタくんは?」


 彼の名前を出しただけなのに、空気がぴしっと固まる。みんなは何も言わない。


「(……一体、どうして……?)」


『これじゃあお友達計画が台無しじゃないか!』と嘆いていると、ツバサが口を開く。


「……待ってて葵」

「ツバサ、くん……?」


 もしかして、君がそんなことになっているのと、彼が学校に来ないことは、何か関係があるのか。


「(だったらわたしは、ただ待つしか……)」


 悔しさに思わず俯いていると、膝の上の手にツバサのそれがそっと重ねられる。



「言っただろ?」

「つばさくん……」

「もう少し、頑張るから」

「……うん」


 ぎゅっと、ツバサが手に力を入れてくる。


「大丈夫だ。絶対になんとかすっから」

「……うん」


 そんな二人の会話を、みんなは心配そうに見守っている。


「お前らも。大丈夫だから。ちょっと待っとけ」

「……翼」

「なんだよアキ」

「飴いるか?」

「いらねえよ!」


 相変わらずそんな会話をするアキラは、きっとこの空気を払拭しようとしたのだろう。


「そうか。だったら俺食べよ」

「やめなさい」


 違った▼


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