すべてはあの花のために⑥
「こんばんは。ワカバさんと、お呼びしてもいいですか?」
「あはははあははははー!!」
葵が呼びかけている間も、彼女はたくさんのものを投げてくる。
「ワカバさーん。わたし、ハルナさんと知り合いで、今日はお友達になりたくてこちらへ来させてもらったんですー」
「あはははー!!」
「でも、その前にワカバさんとも仲良くなりたいと思って。よければ少しお話ししませんかー?」
「あはは!!」
「ハルナさんのこと、わたしまだまだ全然知らないのでー、ワカバさんに教えてもらいたいなーっと思ってー」
「は……。ははっ」
「大事な大事な、あなたの自慢のお子さんだから、きっとすごいこと知ってるんでしょう? わたしにも教えてもらえませんかー?」
「…………?」
「あ、そうか。……ワカバさんはじめまして。わたしの名前はあおいと言うんです。お日様をなくしてしまった、お花の名前です」
だんだんと、ワカバが落ち着きを取り戻してくる。
「……あおい。ちゃん……?」
「わあ! そう呼んでくれるんですか? 嬉しいです! ……立ってるのもなんですし、座ってお話しませんか?」
葵がそう言うと、コクリと頷いたワカバはそのまま床にぺたりと座り込んだ。そんなワカバの前に、葵はにっこり笑いながら座る。
「こんばんはワカバさん」
「こん、ばんは……」
部屋の隅に座っている二人を、三人は心配そうに見つめていた。
「お手々痛くなかったですか? 摩ってあげますね?」
そう言って葵は、ワカバの手をそっとやさしく包み込んでやる。
「……っ」
「あったかあい」
「……じゃあ、わたしがぬくぬくしてあげましょうっ」
ワカバの異常なほどに冷たい手を、葵は摩りながら温める。
「……あおいちゃんは、はるちゃんとおともだち?」
「いえ。残念ながらまだお友達じゃないんですよー」
「そうなの? あの子はとっても笑顔が素敵で、活発で、元気で明るくて。それからとってもよく気がつく子でね? いっつも笑顔でー。男の子みたいだったのー。ふふっ」
「おお。そうなんですかー」
「きっと、あおいちゃんともすぐにお友だちになれるわ」
「……はい。そう、したかったです」
「……あおいちゃん? どうしたの?」
「ハルナさんのこと、大好きだったんですね」