すべてはあの花のために⑥
頭を膝の間に埋める弟を見て、ツバサは大きなため息をついた。
「(……どんだけ不器用なのよ……)」
自分の弟ながら呆れてしまった。
「(そうよね。アンタもあの子のこと、心配でしょうがないのよね)」
たとえこれで自分が嫌われたとしても、彼女のつらい気持ちが少しでも楽になるなら、弟はそうするのだろう。
「(でも言ってから、どん底に落ち込んでるじゃないの……)」
こんなところで、一人でそんなことを考えて、一人で苦しんでたとか。
「(……ほんと。あの子のこと、よく見てるわよアンタは)」
ぽんぽんと、ツバサは小さくなった弟の肩をやさしく叩く。
「よくやるわね、アンタも」
「別に、後悔してないし」
「じゃあなんでこんなとこで小さくなってるの?」
「次の作戦を練っている」
「や、やめてあげなさいよ。めちゃくちゃ傷ついてたじゃない」
「でもオレの前で泣いてくれない」
「日向……」
「信じて欲しいんだ。大丈夫だって。心許して欲しいんだ」
そんな不器用すぎる弟に、ツバサは呆れを通り越し、尊敬した。
しかし、その次の作戦がバレンタインだとツバサが知ったのは、この家に入る直前の、葵の『仲直りできていない』発言だったのだけど。