すべてはあの花のために⑥

 彼にそう言われると、どうしてこうも安心してしまうんだろう。


「……なんだか、本当に助けてもらえるみたい」

「信じてない。信じてって言ったのに」

「……この考えを、わたしは絶対に変えはしないから」

「考え?」

「でも、信じてるんだ」

「は? 意味わかんないんだけど」

「誰かがわたしを救ってくれるって」

「……その方法を、言ってくれなきゃ救えない」

「そうだね。……でも、それが言えないから困ってるんだ。……言ってしまったら、最後だから」

「どういうこと……」

「言ったら。もう……っ」

「……それじゃあさ、言えることは? 何? 言えるところから、オレがあんたのことわかってあげる」

「……でも、嫌いに……」

「だからなんないって。何回言えばいいの」

「……っ」

「そのこと、よっぽど嫌なんだね」

「う、ん」

「あんた、自分嫌いでしょ」

「え……?」

「だから、他人に自分のこと話せないんだよ。ま、オレもだけど」


 ヒナタに影が差して、葵は慌てて首を振る。


「なんで嫌いなの……?! ヒナタくんに嫌う要素なんてどこにもないじゃん……!」

「そっくりそのまま返すけど」

「え……?」

「あんたも、オレから見たらあんたを嫌う要素なんて一つもないよ」

「でもわたし、気持ち悪くて……」

「オレはそう思わない」

「だってそれは、わたしのこと知らないからでしょ……!?」

「だって教えてくれないじゃん。わかるわけないじゃん」

「そ、れは。……そうだけども」

「……オレさ、今日誕生日」

「へ?」

「だから、誕生日」

「……? お、おめでとう?」

「何もないんだ。プレゼント」

「え? ……あ」

「いいよ別に。物じゃなくて。どうせ口実だし」

「ちょっと、どういうことかさっぱりなんだけど……」

「オレの誕生日プレゼント、あんたの話がいい」

「……!」

「もしあんたのこと嫌ったりしたら、オレ死ぬ」

「え!? だ、だめ……!」

「死ぬわけないじゃん。あんたのこと嫌わないもん」

「ぜ、絶対言わない……!」

「信じてないんだ、やっぱり……」

「え。ひなたくん……?」


 しょんぼりしてしまった。どうしよう。


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