すべてはあの花のために⑥

 照れた彼女が可愛くて、トスっと矢が刺さった胸を思わず押さえた。


「……。見せられるの? られないの?」

「……だーめ」

「……じゃあ、今度家に遊びに行きたい」

「……!? ぜ、絶対ダメ……!」

「なんで?」

「……っ、来ちゃ。ダメ……」

「一回行ってるよ?」

「……だ、だめ」

「……どうしても?」

「な、……何しに来るのっ?」

「いろんなことしたい」

「へ……?」

「日記盗み見たり」

「え」

「取り敢えず写真の回収」

「ええ……!?」

「どんな漫画見てるのかとか、アニメ見てるのかとか」

「え……??」

「お家の人と話したり」

「っ、だ、だめ……!」

「シントさんと話したり」

「……っ」

「……でも一番は、あんたから離れたくないから」

「っ、え……?」

「あー。……ねえ、今日リハ休んじゃダメ?」


 彼女の肩に、ぽすんと額を乗せる。


「で。でもひなたくん、仕事把握してないんじゃ……」

「一応アキくんからは連絡もらってたよ?」

「文章と実際の動きは把握しておかないと……」

「……一緒にいたいんだけど」

「……!」

「あんたのそばにいたいんだけど」

「ひな」

「もう、……離したくなんかないんだけど」


 これ以上くっつくことなんてできないのはわかってる。


「……ひなたくん」

「ごめん。なんでもないから」


 それでも、抱き締める腕の力を緩めたくはなかった。


「……今日は、ヒナタくんの誕生日だね」

「……? うん。そうだね」

「2月の、後半だね」

「……?」

「学校、……行こ?」

「……ん。そうだね」


『2月の後半は、学校を休むから』

 そう、みんなには言ってきた。ここ何年もずっと。


「……一緒に、進むんでしょう……?」

「うん。当たり前」


『オレと一緒に、前に進もう?』

 彼女にそう言ったのは、紛れもない自分だ。


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