すべてはあの花のために⑥

 シャワーを浴びに行ったヒナタはというと……。


「…………はあ」


 なんだか疲れたご様子で、シャワーを浴びていらっしゃいました。


「なんであんなケロッとしてんの」


 なんだか苛ついていらっしゃるご様子。


「……離れてちょっと寂しいとか。物足りない感じがするのオレだけとかどういうことよ」


 ただ拗ねていらっしゃっただけでした▼

 制服に着替えて、取り敢えず取りに行かせてくれなかったカードを取りに行く。カードをよく見た後、大きなため息をついてそれを鞄の中へ。


「……ま。あんたには申し訳ないけど」


 ヒナタは、ポケットに忍ばせておいたスマホを取り出す。


『わたしの名前は、道明寺じゃないんです』


 ボイスレコーダーを起ち上げて、葵の話を聞き直す。


「……うん。ま、こんなもんでしょ」


 ちゃちゃっと操作をしてから、制服のポケットへと戻す。


「もうしないって言ったのにねー。いやー、楽しくなってきたねえ」


 そう言うヒナタの顔は、不敵な笑みが浮かんでいた。


 リビングに戻ると、どうしてかいい匂いが。


「え。何してんの」

「あ。おかえりー! 朝ご飯いる?」


 葵が用意していた朝食は、パンやスクランブルエッグなど。


「(え。美味そ……)」

「あれ? いらなかった?」

「いる」

「そっか! よかった!」


 エプロンとか、どっから持って来たんですか。普段つけて料理なんてしないんですけど。


「(……うわ。チカと同じ妄想した。やめよ)」


 ぶんぶんと、自分の頭の上を手で払っているヒナタを見て、葵は首を傾げていた。


「飲み物は? 何にする?」

「コーヒー」

「はーい」


『なんでこの人、自分の家みたいに勝手がわかってるんだろう……』と思いながらも、何もしなくても出てくるコーヒーが、ちょっと嬉しかったりした。


「はい! 召し上がれ~」

「……いただきます」


 ヒナタの前に座った葵も、もぐもぐと嬉しそうにご飯を食べていた。


「(美味しそうに食べてる……)」


 ニコニコ笑顔で食べる葵に、ヒナタも自然と顔が綻んだ。


「(朝ご飯とかマジ久し振りかも)」


 いつもは、食べない。一人で食べたくなかったから。


「(……誰かと一緒って、嬉しいよね)」


 んまと、決して口には出してなかったけど、綺麗に完食したのを見て、葵が嬉しそうに笑ってくれた。


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