すべてはあの花のために⑥
っ、ふっざけんなあー……!?
今日は卒業式最後のリハーサル。みんな、大層驚いていらっしゃいました。
え? 何がって? ツバサですよツバサ。
教室に……いや、学校に彼が来るなり、女子からは途轍もない悲鳴と、コアな女子と男子からは奇声が上がっていた。
生徒会のメンバーも、驚いてはいたけれど、でもそれよりも嬉しそうな顔をしていた。
午前の授業を受けた後、卒業生と卒業式に参加する生徒、及び生徒会メンバーは、午後から放課後までみっちりリハーサルを行った。
ヒナタと、あとツバサも、やっぱり生徒会に選ばれるだけあって、ミスもなくスムーズにリハも行えた。
今はそのリハも終わり、明日の最終確認も終え、みんなで生徒会室に来ている。
「俺からみんなに報告なんだけど」
先にちゃっちゃと、ツバサが今まであったことを報告した。
「……父さん、別に陽菜のこと忘れてるわけじゃなかったんだ」
「そっか。よかったね! つっくん!」
「うん。日向の方はあいつが話すと思うけど。あいつもなんとか助けてやれたから、こうして戻れた。みんなももう、あいつのこと、俺らのこと。気遣わなくていいから。名前出してやって」
そう言ったツバサに、みんなが苦笑いをする。
「今は逆に違和感ありありだけどねー」
「デカくなってたから制服入らなくて。理事長に新しいのもらってきた」
「でも、よかったな翼。……頑張ろうな」
何のことかわかったツバサは、アキラに大きく頷いた。
「はい。じゃあ次。オレからねー」
相も変わらずやる気のないまま、ヒナタも話し始めた。
「母さんにハルナって呼ばれてたの、みんな知ってるでしょ? あれ、薬やってたから」
淡々と答えるヒナタに、先程まで気まずかったみんなは思わず目を丸くする。
「だから薬。それのせいでオレのことハルナって呼んでたの」
「え。そ、そうだったの……?」
「うん。まあ警察行く前に最後オレのことわかって呼んでくれたし、ちゃんと帰ってくるって約束したから。オレは母さんのこと待ってるよ」
「……そうだな。ヒナタ。ほんと、よかったっ」
目に涙を浮かべるチカゼに、「はいはいそうだねー」と、ヒナタは素っ気なく返していた。少し、嬉しそうに頬が緩んでいたけれど。