すべてはあの花のために⑥
終業式。2年生最後の登校日。
「(この一年、わたしにとって、毎日がとても幸せなものでした)」
卒業式が無事に終わり、葵たちは来年の生徒会への引き継ぎ資料を作成していた。
「(毎日が幸せすぎて、『ああ。これがわたしの幸せだったんだ』と。そう、思っていました)」
引き継ぎ資料は作成したものの、どうやら桜の生徒会は1年生の時にしていた人はその時点で次も選ばれる可能性が高いらしい。まあ1年で選ばれているからだろう。だから、チカゼとオウリとヒナタは来年もすることがほぼほぼ決定しているので、わざわざ新生徒会と旧生徒会の引き継ぎが行われないのだ。
「(……神様? わたしは今まで、家のためになることが自分にとっての幸せの道だと思っていました。でも、違ったんですね。みんなのためになることが、……わたしの大切な人のためになることが、本当のわたしの幸せの道だ)」
葵たちが生徒会に選ばれることは滅多にない。3年生は、Sクラスだと言えども進学や就活、その他諸々のことがあり忙しいからだ。
「(本当に楽しかった。これ以上。ないくらい。……幸せだった。もう。十分すぎるくらいに)」
終業式が終わったら、理事長とキクからお疲れ様パーティーをしてもらうことになっている。
「(その人たちに、わたしは幸せになって欲しい。たくさんのこと、教えてもらったんです。わたしのこと、あったかく、包み込んでくれてきたんです)」
きっと、それもあっという間に終わるだろう。今日帰ったら『最後の仕事』をしなくては。
「(神様? そんな人たちを幸せにするには、わたしが本当に幸せにならないといけないみたいなんです。……幸せに。なってみせます。必ずです)」
――時間を延ばす準備は整った。
「(ただで終わらせるつもりなんかありませんよ! だってわたし、めちゃ強お嬢さまって設定だし!)」
あとは、誰かを信じて待つことしかできないのは、少し悔しいけれど。
「(でもわたしは、お月様を信じてますから! 取り戻してやりますよ。わたしの名前を。太陽を!!)」
冷たくなったカラダ。
冷たくなったなんてわからなくなったカラダ。
砂時計が今、――……引っ繰り返された。