すべてはあの花のために⑥
ピキピキと、先程よりも音が大きく鳴った突如。かくんと、まるで糸が切れた操り人形のように首が落ちる。……嫌になった。情けなかった。こんな伝え方しかできない自分が。
「ちょ、大丈夫?」
心配そうにツバサが駆け寄る。
「……つ、ばさくん……」
「うん。何?」
葵に目線を合わせるように、しゃがみ込んでくれる。
「みんな。怒っちゃった」
「……大丈夫よ」
「怒らせ。ちゃっ……」
「大丈夫。明日になったらケロッとしてるわよ」
「わたしが。全部悪いんだよ。だってわたしは罪人だから……」
「何言ってるの。勝手に日向が言っただけでしょ?」
「悪いけどオレはまだあんた許してないよ」
こんな状況でも表情を崩さないヒナタに、残ったみんなが戸惑った視線を向ける。
「ひ、なた……?」
「はいさっきの続きね。まだちゃんとこいつの口から聞いてないのに、みんなして盛り上がって勝手に出て行って。ほんと困ったもんなんだけど」
「ちょ、日向。待ちなさ」
「答えは迅速且つハッキリとだから」
ヒナタは足を組み、葵に強い口調で問いかける。
「一つ。家の駒であるあんたが、どうしてアキくんと結婚させて欲しいなんてお願いできるのか」
「…………」
「一つ。アキくんにはなんて返事をしたのか」
「…………」
「一つ。いつ縁談の承諾があったのか」
「…………」
「一つ。どうして迎え呼んでるの。なんでここ以外は仮面つけるの」
「…………」
「一つ。……何、罪増やしてんだよ」
「……。え……っ?」
ヒナタから伝わってくるのは、完全な――拒絶。
「何。オレの友達に、つらそうな顔させてんだよ……」
「ひっ、ひな」
「何オレの友達怒らせてんだよ!」
「――……!」
声を荒げる姿に、体が竦む。
「……やっぱり間違いだった」
「……ひ。ひなたく」
「馴れ馴れしく呼ばないでくれる」
「……! ……っ」
ヒナタの発する拒絶の空気に、その場のみんなは声が出せない。
「あんた、最低だよ」
「……」
「あんたなんか、友達じゃない」
「……ッ!」
ヒナタは、大きなため息をつきながら立ち上がる。
「ごめんけど。オレはあんたのこと、友達だなんて最初から思ってないから」
彼もまた、バタンッと思い切り扉を閉めて出て行った。