すべてはあの花のために⑥
「ということであっちゃん! 決行はバレンタインで決定だー!」
「(完全に楽しんでる……)」
「きっと、それまであっちゃんとは話せなかったのに、バレンタインチョコなんかもらったら飛び跳ねて喜ぶんじゃない?」
「え。……わたしなら『今更なんだっていうんだよ。こんなんでご機嫌とろうとか考えてんじゃないだろうな』って思うよ」
「え。どうしよ。そんなこと思われたら……」
「(わたしに言われても……)」
「で、でも、ちゃんと謝るんでしょう? 伝えるんでしょ? それが+αであるからいいんじゃない? 何とかなるって~」
「(いや、一世一代の試みなんですけど。そんな適当にしないでー……)」
そんなこんなで、キサがさくっと決めてしまったので、葵も結局のところそれに乗ることにした。
「それはそれとしてさ、あっちゃん」
「ん? なあに? キサちゃん」
「その、あっちゃんが言えないことって、誰にも言えないの?」
「え?」
葵たちはそのまま飲み物を作って、今日はここでゆっくりすることにした。
「いや、あっちゃん言えなくてつらそうだったから、誰かに言えればスッキリできるんじゃないかなって思ったんだけど」
「ああ、それなら……」
あれ? ちょっと待って?
「(……誰も、いないじゃん)」
シントにはもう話せない。理事長も、もしかしたら誰かに聞かれるかもしれない。アキラには手紙で全てを伝えたわけじゃないし、シランに聞いてもらえるかもしれないけど、バレてしまえば彼に危険が及ぶ。
「(……怪盗さんは……)」
彼にだって、聞いてくれるって言われたけど、ぶちまけるわけにもいかない。ツバサも、理由は聞かないにしても、流石にみんなにもう迷惑は掛けられない。トーマは受験の真っ最中。邪魔なんてできない。
「あっちゃん?」
「あ。……ごめん。うん。大丈夫。ちゃんといるよ?」
「そう? ……溜め込んじゃダメだからね? 吐かないといつか爆発しちゃうよ?」
「爆発!?」
「うん。これほんとだよ。爆発して、ずっと涙止まらなくなっちゃったり、心を閉ざしちゃったりするんだから」
そ、それだけは何としてでも阻止しないと。
「うん。大丈夫。ちゃんといるよ。ちゃんと吐くよ」
「何かあたしに手伝えることがあったらいつでも言ってね。あっちゃんのためなら、右手でも左手でもあたしの体でも、ついでに菊ちゃんでも貸してあげるから!」
「じゃあ最後のでお願いします」
「へ?」