すべてはあの花のために⑥
おえー……
それからその日は、葵にとっては一番と言っていいほど最悪な日にはなってしまったけれど、キサの助言で、次の日からは完璧に仮面を着けた。次の生徒会集会はバレンタイン当日の放課後になるので、本当にそれまではみんなとは必要以上に話さないことに。
申し訳なさそうにして謝ってくれそうな雰囲気になる時もしばしばあったけど…………。
「(悪いのは全部、わたしだから)」
そう言い聞かせて、言われる前に仮面で逃げた。
「(わたしが先に謝らないと、意味ないんだから)」
だからと言って、言いづらいことに変わりはない。当日はしっかり準備しておこう。
それから迎えがくることはなくなったため、授業が終わり次第さっと帰宅。日記を書き終わったら就寝時間ギリギリまでみんなに伝える言葉を考えた。
そんな日が続き、あっという間に1月下旬に入る。
「キサちゃん。少しいいですか?」
「あ。あっちゃん。どうしたのー?」
昼休み。クラスのみんなとご飯を食べていたキサに、葵が話しかける。アキラ以外の男子たちは気まずいのか、空気が少し硬い。
「葵。今日も一緒に帰らないのか。昼食も一緒に食べられなくなって寂しい(しゅん)」
「申し訳ありませんアキラくん。家でやることがありますし、(※暗号の作成)昼食は……すみません」
アキラはというと、葵の返事を見てもいつも通り接してくれていた。本当に、やさしすぎる人ばかりだ。そんなこと、最初から知っているけれど。でも気まずくて、ご飯は一緒に食べられそうにない。
キサが何の用事なのか首を傾げてるので、さっそく本題に。
「近々彼氏を貸してくれませんか?」