すべてはあの花のために⑥
「(……レンくんが言ってた。ここに、倒れてたって……)」
嫌な胸騒ぎを覚えながら、葵はゆっくりと英語教室の扉を開ける。
「(……入ってくるなって。空気がピリッてした)」
そこには、窓際の机に腰掛け、青い空を見上げている彼が。葵は、そんな空気に気づかない振りをした。今日は、きちんと謝りに来たから。
ゆっくりと歩いて、彼のそばに立つ。ヒナタは、葵を見向きもしなかった。何を考えているのか、ずっと昇った朝日を見上げているだけで。
ごくりと緊張で喉が鳴る。そして意を決し、すっと彼の前にチョコレートを差し出した。青と白、黄色のリボンが結ばれたそれを。
でも、彼はそんな葵にも、見向きもしない。このままじゃダメだと、葵は緊張でカラカラになった口を動かす。
「ひ、……。あの、話したいこと。あるんです。謝りたいこともあるんです。……っ、お友達に。なって欲しいんですっ」
なんとか紡いだ言葉に、目の前の彼は机から降りて、やっと葵の方をゆっくりと振り向いてくれた。