すべてはあの花のために⑦

 そう言われて、ミズカは『今日だけだぞ?』っと、ジャ~っと水を撒いてあげた。


『土全体が湿って、黒っぽくなるまでで十分だからな~』

『ふむふむ……』

『朝昼夕と、一日三回、同じぐらい撒いてやるんだぞ~』

『はい。わかりました!』

『雨が降ってる時はいいからな? やり過ぎはダメ。オッケー!』

『はい! おっけー!』


 二人揃ってにかっと笑う様子を、ヒイノが嬉しそうに見ていた。


『それじゃあ最後の仕上げだ!』

『え? なにするんですか?』

『それはね? 毎日たくさん話しかけてあげるの』

『え? おはなに、はなしかけるんですか?』

『そうだ! そして、たくさんの愛情を注いであげるんだ!』

『……あい、じょう……』


 また一番わからないのが出てきてしまった。お花を育てるのは難しそうだ。


『お花は、人の気持ちがわかるのよ?』

『え? ……そ、そんなこと図かんに書いてなかった……』

『トップシークレットだからな! 花咲家しか知らない秘密だ!』

『……みじゅかさんが言うとうそっぽい……』

『ふふっ。そうね? 大抵の人は知ってるわ? ストーカーで人のもの盗んで嘘つきとか最低ね!』

『え。……み、味方がいねえ……』


 そんな落ち込んでいるミズカは置いておいて。


『おはな。……ほんとうに、わかるんですか……?』

『ええ。そうよ? あおいちゃんの楽しいとか嬉しいとか、そんな明るい話をしてあげたら花もそれに答えてくれて、大きくて綺麗で明るい花を咲かせてくれるの』

『おー』

『でもな? 悲しいとか寂しいとか、そんな話をしてやったら、お花も小さくて暗くて、綺麗には咲けないんだ』

『え?! ……それは、いや、です……』

『だから、あおいちゃんはお花たちに笑顔で話しかけてあげてね?』

『あおいの笑顔だったり話だったりで、どんな花になるか変わるからな~!』

『……はい! がんばります! ……でも、あいじょう。よくわからない……』

『ん? オレが畑にやってるみたいでいいんだぞ?』

『それも、わからないまま、やってるから……』

『大丈夫よ? きっと、この芽が出る度に大きくなる度に、愛おしいって感情が芽生えてくるはずだから』

『……よく、わかんないです、けど。……でも、きれいなおはな、さかせてあげたい。がんばります!』


 そう言う葵に、二人は本当に嬉しそうに笑ってくれた。

 芽が出る度、大きくなる度、葵は嬉しくなって二人に報告をしに行った。小さな芽から大きな葉をつけ、蕾になった花を見る度、葵の胸の中があったかくなりました。

 それから葵は、少しずつ暴れなくなっていったのです。


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