すべてはあの花のために⑦
『よしよし。流石は私の娘だ』
『……っ』
『次はここだな。なんだ、こいつら当事者たちには全然打撃が与えられなかったみたいなんだがな』
そんなの、少しぐちゃっとしたらいいって言ったじゃないか。
『ここも潰しておきたい。そうすれば不安要素もなくなる。さあどうする? お前なら』
『…………っ』
ごめんなさい。関係ない人を。こんなに巻き込んでしまって……。
こんな。私利私欲にまみれた奴の。犠牲になって……。
その写真を見たら、どこかで見覚えのある青年がいた。
『(……あれ。この人……)』
過労死した男性の子どもに、よく似ていた。
『(……好き、か……)』
写真を見ただけで二人の……いや。三人の気持ちが伝わってくる。あったかい。
『(……でもっ。もう、こうするしか……)』
心の中で、何度も謝った。謝って許されるわけないのに。
『……当事者、同士に打撃が与えられないなら。本家を。……血を、使えばいいっ』
『……そうか。わかった。その通りにしよう』
それから両方の本家を唆し、二人の気持ちを引き裂いた。
枯らした花の名前は…………
菊
と
牡
丹。
そ
し
て
ツ
ツ
ジ。
『最後は、ここだな。ここが一番難関だと思ったが、……ふっ。ふふははは!! いやあ面白いっ! 最高だ!!』
壊れたように、アザミが嗤い出す。いや、もうきっと、出会った時から壊れていた。
『どうやったらこいつを陥れられるかと思ったが。……勝手にどん底に落ちてくれたようだ! 愉快愉快!!』
『…………』
『さあて。娘を亡くしてどん底のこいつに、とことん地獄を味わわせてやりたいんだがな』
『(……なんで、とか聞いても。どうせ『私のため』とか言うんだろうな)』
『こいつはな、一番の邪魔者なのだ』
『……え』
いつになく饒舌に、そう話してくる。
『一番厄介な奴だ。一番バレる可能性が高いだろうからな』
『(なんで、だろう。今までそんなこと、言わなかったのに……)』
あとで、“彼”について調べてみようと思った。
『さあ。お前の力を借りるぞ。もうやることは決まってるからな、それの報告だ』
『え……?』
そう言うと、アザミは立ち上がって部屋を出て行こうとする。
『薬を使わせてもらう』
『……!? だ、だめだ! あれはまだ改良しないと……!』
本当に、壊れてしまう……!
『壊れようがどうでもいい。反応が出るものでも構わないが、壊れた妻を見てあいつが表に出てこなくなれば、それでいいんだからな』
『……っ、やめて! あれはっ、まだ。依存性が高くて……』
壊れるだけじゃない。忘れたいものを、本当に忘れるために、おかしくなってしまう。
『……いいんだ』
一瞬、何故かアザミの顔がやわらかくなった気がした。
『私はお前を信じてるからなあ? お前のやってることは最高だ!!』
『……っ……』
こんなことして、何が愉しいんだ。
すでに萎れ、薬が撒かれた花は…………
ア
ヤ
メ
と
ヒ
ナ
ゲ
シ
の
花。