すべてはあの花のために⑦

 葵は赤になりすますため、赤色のカラコンを入れておき、いつでもアザミからの連絡があってもいいよう、寝ずの晩を過ごしていた。
 うつらうつらしていた時、部屋の扉が開く。


『……なんだ、寝不足か』

『……別に』


 葵は赤として、アザミと話をした。


『さて、今日はここだな』

『(……あれ。この人たち……)』


 それは以前、悪い奴らだと葵に嘘の情報を言ってきた暴力団の家族写真。


『(……。奥様……)』


 そこには、小さな子どもと男たちはいたが、女性の姿はもうなかった。


『こいつらを中から壊していっている最中なんだがな、なかなか手強い』

『…………』


 どうする? どうやって彼らをすくう?


『(……あ。この人たち……)』


 それはあの道場にも写っていた五人組。


『(……弱そう)』


 彼らは、まわりの連中に比べたらきっと弱いんじゃないかと思った。


『さて。お前ならどうする』

『(それにこの子どものこと、みんな大好きみたいだ)』


 だったら……と、葵は赤になりすまして案を話す。


『……この、こども』

『ん?』

『子ども、使ったら? いつもみたいに』

『それがな、ガードが堅すぎるんだ。ここは今まで以上に手強い』

『(え。……皇よりも……?)』


 それだけこの子どもが大事なんだろうと思った。それに男所帯。手を出したら出したで反撃がすごそう。


『……だったら、子どものとも』


 いや、友達は嫌だ。もう、そんなこと。自分のようにつらい子を、犠牲を出したくない。


『この子どもに近い人、使えば?』

『……それなら、奴の友達を』

『いや、友達じゃない方がいい』

『……そうか』


 盲信のせいで、その理由など聞いてこない。


『……この人たち、使って』

『ん? ……ああ、今中から壊してもらってる、嘘の情報を信じてるバカな奴らだな』

『(そうか。この五人がそうなら……)こいつらを、上手く使えばいい』

『たとえば?』


 ……信じて。自分の大切な子どもを、……信じて。


『子どもに近い人がいたら、その人を使えばいい。子どもにとってその人が悪影響を及ぼしてるとかなんとか言ったら、子どもが大切そうだから、絶対にバカなことすると思うよ』

『……そうか。今日は詳しく言ってくれるんだな』

『(……! 赤は、そんなに提案はしていないの?)』

『わかった。子どもの近しい奴を使うこと。それからあの五人を使うこと、だな』

『……っ、そうすれば、勝手に中から崩れていくと思う。評判もガタ落ち。あっという間に潰れるんじゃない?』

『……そうか』


 そう言ってアザミは頭を撫でて出て行った。


『(……どうか。しんじて……)』


 大切な。自分の子どものことを。


『(ちゃんと。わかってあげて……)』


 愛してる。子どものことを。


『(うそ。ぜんぶ。……ぜんぶ。うそだから)』


 間違わないで。絶対に――。
 それからその計画がどうなったのか。アザミからの連絡はなく、赤からも報告は開発したものの運搬についてしかなかった。


『(……ごめんなさいっ。……ごめん。なさい。……無事で。いてっ……)』


 葵が最後に枯らした花は…………


                  ナ
                  デ
                  シ
                  コ。


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