すべてはあの花のために⑦
本当に、ありがとう
若すぎる夫婦の間に生まれたわたしは、最初から異常な子供でした。
生まれた時のこと、今でもちゃんと覚えてます。記憶力が異常によく、新しいことに興味津々で、いろんなものを吸収していきました。また勘もよく、子どもながらに母を助けたこともありました。
でも、わたしは人としてやっていいこと、悪いことの区別がまだきちんとついていなかった時、自分の両親の仲を悪くしました。
それからというもの、父の仕事のミスを自分のせいにされ、母には話しかけることも、笑うことも許されませんでした。
それから、わたしが3つになる少し前、わたしは二人に海へ連れて行かれました。そして小さな舟に乗せられて、わたしは広い海へと捨てられました。
何度も陸へ行こうと手で舟を漕ぎました。何度も、何度も。でも、舟は沖へと行くばかり。体力もなく、照りつける太陽に、どんどんわたしは衰弱していきました。
泳ぎ方もわからずただ舟に乗っていましたが、喉が渇いていたわたしは、もう何も考えられなくなり、海に飛び込みました。
そこでわたしに、もう一つの人格が生まれました。もう一人はわたしにこう言いました。わたしの名字と引き替えに、わたしをここから助けてくれると。
たくさんの契約をされました。毎日日記を書くこと。大人になるまでに、婚姻するまでに名前を呼ばれること。もしそれがなされなかった時、わたしの体を奪うと。
……今思っても、そんなバナナと思います。
でも、事実です。だってわたしはもう、もう一人のわたしに多くの時間を奪われてしまったのだから。
それから、ちょうど通りかかった船に乗っていた男性に、命を救われました。その男性と、奥さんは、わたしのことを大事に育ててくれました。
もう一人のわたしが生まれたのは、わたしの心が弱かったから。旦那さんと奥さんは、わたしにたくさんのことを教えてくれました。
精神状態も安定した頃、今の義父が家にやってきました。そこでわたしは、最初の罪を犯したんです。
東條圭撫くんのお母様を、彼から。彼らから、引き離してしまいました。
次に、氷川 桜李くんのお父様を騙し、長い間牢屋に入れてしまい、そして自殺まで追い込んでしまいました。
次に、朝倉 菊先生のお父様を、過労で殺してしまいました。
次に、二宮 茜くんのお祖父様を、お父様を、襲わせました。
次に、柊 千風くんのご両親の会社を、内部から攻撃しました。
わたしが、……すべて計画したことです。指示したことです。
わたしを育ててくれていた夫婦が、ある日二人とも不倫をしていました。好きとはなんなのか、愛情はなんなのか。わたしはもう、わからなくなっていました。
そして義父の毒牙とも知らず、わたしは今の家、道明寺に引き取られることになりました。