すべてはあの花のために⑦

 情緒が不安定だったあの頃のわたしは、皇 秋蘭くんの誕生日パーティーへ行きました。もちろん行ったのはわたしではありません。もう一人のわたしです。
 もう一人のわたしが、その時アキラくんを好きになり、誕生日に彼が欲しいと義父に願ったそうです。

 ……そこではじめて、わたしは罪を知りました。よかれと思ってしてきたことを、義父に上手く利用されていたのです。

 しかし、抵抗はできませんでした。人質にわたしのことを育ててくれていた、大切な夫婦を取られていたからです。


 それからわたしは、どんどん罪を重ねていきました。

 喫茶店に訪れたオウリくんのお母様の飲み物に、義父から開発を頼まれた薬を混ぜ、おかしくさせてしまい流産をさせました。

 チカくんのご両親の会社を、完全に倒産まで追い込みました。……そして、君を出しに、両親を追い詰め、殺したのもわたしです。

 桜庭 紀紗ちゃんと桐生 杜真さんの、家庭の問題を起こさせたのも、わたしです。


 家で、もう一人のわたしは反応が出ない薬を作ったり、記憶操作に関する仕事をさせられていました。

 ただ、わたしを守るために。義父に背くこともできず。……犯罪に手を染めていました。


 それから、仲良くなった子も、殺されてしまいました。わたしにはそんな者必要ないだろう、と。ただ、それだけの理由でです。

 アキラくんを誘拐しようと計画しました。そのせいで、お母様は散り、お父様は壊れ、シントをここの執事として雇い、たくさんの罪に手を染めさせてしまいました。

 それから、キサちゃんとトーマさんの家を唆したのもわたしです。

 ツバサくんとヒナタくんのお母様を、おかしくさせたのもわたしです。薬を作ってしまったのは、わたしなのだから。

 アキラくんをおかしくさせたイヤーカフを作ったのも、もちろんわたしです。


 ……ユズちゃんを、コズエ先生を襲わせたのも、わたしです。

 カナデくんを苦しめたのは、人を警戒してしまうようになったのは、わたしのせいなんです。


 それだけではありません。雨宮 梢先生も、月雪 蓮くんも、わたしがチカくんのご両親の会社を倒産へと導いたのがきっかけとなった、犠牲者の一人です。

 もっとたくさんの人がいます。それだけわたしは、多くの人傷つけ、多くの人の命を奪うようなことを、させられてきました。


 ……でも、それだけでは終わりません。

 家は、桜ヶ丘の全校生徒を人質に、海棠に薬の密売をさせようとしています。わたしが高校を卒業してしまえば、それがなされてしまう。

 ……いいえ。卒業はもう、していると言っても過言ではありません。もう、書類は受け取っているのだから。


 援助開始は実際の卒業後。それまでに、必ずわたしを殺してください。でないと、被害が広がっていってしまうでしょう。

 わたしは、育ての親を、そしてみんなを人質に取られて動けません。
 ……道明寺と繋がっているのは、政治家です。そことの繋がりを絶たない限り、道明寺のバックに警察がいます。

 だからどうか、冬青さん。これからの未来を、救ってください。あなたならできる。わたしは、……そう信じています。


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