すべてはあの花のために⑦

 ……わたしに、友達ができるなんて思いませんでした。
 本当に嬉しかった。危険と常に隣り合わせで、それをみんなになど知られたくなかった。

 今までみんなが苦しんだのは全部、わたしが悪いんです。だから、言いたくなかった。絶対に嫌われる。最初で最後の友達に、嫌われたく、なかったんです。


 きちんとお話しできなくてごめんなさい。カード、……結局みんなからは連絡なかったな。あ、電源切れてたもんね、しょうがないか。


 あのカードの答えは、至ってシンプルです。
 上の赤は真ん中を。黒も真ん中を。下の緑は、両サイドを一文字ずつ読んでくれたら答えが出ます。

 赤は、もう一人のわたしのこと。黒は、人格が混ざった時。緑は、もちろんわたしのこと。
 答えは、【わたしは ふたつの じんかくしゃいやだたすケて】

 ……だからなんだって話ですけどね。きっとわたしは、みんながわかってくれたとしても、自分が二つの人格を持ってて、それが嫌なんだってことしか、言わなかったんじゃないかと思います。ほんと、頑固者でごめんなさい。


 あと、みんなにお手紙と一緒に写真も同封して送りましたね。それから、わたしが行きたかった花畑。わたしの花がたくさん咲いている花畑。わたしの代わりに是非、行ってみてください。すごく綺麗な場所でしたから。

 あと、お手紙にも少々仕掛けを用意しました。絵本と同じですね。
 わたしがなくしてしまったお日様に、どうか当ててみてください。わたしの最後のメッセージが書いてあります。


 ……でも、わたしは信じてます。最後の最後まで。
 誰かに名前を呼んでもらえるって。そう、信じてます。



 もし、わたしが消えてしまったら、わたしの代わりに花咲家の人を守ってください。どうか。お願いします。

 今までたくさんの人を守ってきたけど、今日でもう最後です。
 どうか、わたしの願いを叶えてください。もう、わたしを罪の泥沼から、解放してください。


 今までたくさんの人によくしてきてもらいました。
 でも、そんなやさしさをもらう資格など、最初からわたしにはなかったんです。

 みんながわたしにお礼を言う。でもそれは間違っている。
 始めた理由はどうであれ、わたしはただ、自分の罪滅ぼしとして願いを叶えていただけなのだから。


 それでもみんなといて。みんなの家族と触れ合って。……あったかかった。今でも、胸の奥があったかいです。本当に、ありがとう。


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