すべてはあの花のために⑦
「『朝日向 葵』さん」
「――……!!」
彼の声が。心の奥に、すとんと落ちてくる。
……体が。あたたかくなっていってるのがわかる。
「あなたは、道明寺 藍さんと結婚し、夫としようとしています」
ふるふる……と。葵は止まらない涙など気にせずに、首を振る。
「あなたは、この結婚を神の導きによるものだと受け取り、その教えに従って、妻としての分を果たし」
涙を流しながら。頬が緩み出す。
「常に夫を愛し、敬い、慰め、助けて変わることなく、その健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しき時も」
……なんだ。こんなに体って、あったかかったっけ。
「死が二人を分かつ時まで、命の日の続く限り」
涙だって。……こんなに熱かったっけ。
「あなたの夫に対して、堅く節操を守ることを約束しますか?」
ふわりと笑いながら聞いてくれる彼に。葵は涙を流しながら、同じようにふわりと笑い返した。
「いいえ。約束しません。わたしは。……好きな人の隣にいたいですっ」