すべてはあの花のために⑦

「つ、次は確か、新入生歓迎会だねっ!?」


 キサが無理矢理話題を変えた。頑張った。


「あーそっか。歓迎会なー。オレ歓迎されてねえわそう言えば。誰かさんと誰かさんと、誰かさんがもたもたしてっから」

「……? そう言えばそうだな。柊を新歓で見てない気がする」

「え。ユッキー。オレの存在ってそんなに薄いっ!?」

「冗談冗談。何かあったのかなって心配したけど、最後のドロケイには来たから、サボってたのかと思ったんだ」

「オレの扱いそんな感じで行く!?」

「何言ってるんだ柊。いっつもこんな感じだろう?」

「嘘情報流すんじゃねーよ!!」


 最近いじられてなかったチカゼは、涙目になった。


「新歓かー。そう言えば桜庭さんと、あおいさんもいませんでしたよね? あと、朝倉先生も。……何かあったんですか?」


 チカゼの涙には興味がないのか、レンは完全にスルーした。


「はい。実はいろいろありまして……」

「あっちゃん!?」

「お、おい……」

「その新歓とは別に仕事を頼まれていたので、そちらをしていた結果、何とかドロケイまでには間に合ったんです」

「あー。そうなんですね。それは、お疲れ様でした」

「「(いや、間違っちゃない。一つも。その通りだけどね?)」」


 焦っても余計ダメだろうと、二人はアイコンタクトで事なきを得た。


「そのあとは、……学校のイベントではないんですが、みんなで熱海に行ったんです」

「え? あーちゃん……?」


 それはもう、仕事ではなくて出来事だ。でもそれで構わないのか、レンは楽しそうに聞いていた。


「理事長のプライベートビーチに毎年皆さん行っているそうで、わたしも一緒に行かせていただいたんです」

「そうなんですね。それはとても楽しそうだ」

「今年も、行けたらよかったんですけど……」

「あおいチャン……」


 俯いている葵を、覗き込むようにレンが話し出す。


「まだ行けないと決まったわけではないのでしょう? 頑張って治してください」

「……はい。ありがとう、ございます」


 仮面を着けているのでハッキリとはわからない。でも葵のその言葉に、みんなは少し違和感を覚えた。


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